思えば私が初めて出会ったCORBO.が、SLATEシリーズのキーケースでした。一見シンプルなのに思わず触れてみたくなる不思議なデザインで、その佇まいに衝撃を受けたのを今でも覚えています。
私の私物のSLATEシリーズ キーホルダー(写真右)は、使い始めてもう8年ほどになります。
左に新品のサンプルを置いて比較していますが、当初からは見紛う程に、豊かな表情の変化をしている事が分かります。真鍮金具のエイジングも同様。擦れて削れて角が丸くなり、鈍いゴールドになりつつも、静かにモノとしての存在感を放っています。
おろしたてのSLATEのイタリアンオイルレザーは、まるで呼吸をしていて、吸い付くようなしっとりとした質感を湛えています。触れると革には適度なコシがあって、直感的に「これは良いエイジングをしてくれそうだな」という安定感、手応えが感じられます。
初見では分からない、緻密な作り込み
外見だけ見ると、非常にシンプルなSLATEの小物。実は表面からは見えない部分まで練り込まれ、緻密に作り込まれています。
こちらは名刺入れ。全体的に革の漉き(革を薄くする工程)を調整し敢えて厚みを残すことで、革そのものの重なりを意図的に強調。モノとしての量感が増し、スマートになりすぎないよう工夫が施されているのが分かります。
コバに残る、手仕事の跡
切れ目となるコバ(革の断面)は一本一本布などで手磨きが施され、焼けた様な濃い色を帯びています。これが本体との微妙なコントラストを生み出し、佇まいに貫録を与えています。
何枚もの革が薄く漉かれ、重なり、まとめ上げられ、そうして磨かれたコバはまるで地層のよう。目を凝らせば重ねられた革の枚数がうっすらと数えられそうな、数えられないような…(笑)。
そんな大切にしたくなるような繊細な手仕事の跡が残っているのも、SLATEの趣と言えます。
太さ・ピッチの違う2本のステッチは、内側が芯材や裏地などを止めるもので外側がマトメになります。これにより、経年の劣化で芯材がボロボロと落ちてくるのを防ぎ、裁ち落したコバの弱点をも克服しています。
さらに内側にホックがある部分は、長くつかえば革とホック金具のアタリが出て、より深いコントラストを生み出します。結果として、持ち主が長く使い込んでついた傷やシミ、スレなども革や手のオイルと相まってまろやかになり、微妙な濃淡のある豊かな表情に育って行きます。
SLATEは“3度オイシイ”
見て良し、使って良し、長く使ってなお良し、のSLATEシリーズ。
未使用の状態も良いものですが、SLATEが真価を発揮するのは、やはり使い始めてから。イタリアの名門タンナー「バダラッシー・カルロ」社のこの特別なオイルレザーは、長く使ううちに目を見張るような美しいエイジング(経年変化)を見せてくれます。
初めてCORBO.を持つという方にも、既にCORBO.をいくつも持たれている玄人の方にも、同じようにオススメしたい逸品です。